感染列島

(監督:瀬々敬久/主演:妻夫木聡/2009年)

 

今これを見てしまったら、ますますコロナにビビっちゃうんじゃないだろうか?見るの?見るのか?私?と思いながら、再生ボタンを押した。

 

前半、たたみかけるように恐ろしくて、開始10分やそこらで見るのをやめようかと思った。でも、次第にいろいろと「?」という突っ込みどころも出てきて、フィクション感をひしひしと感じ、徐々に怖さがしぼんでいった。


舞台は、2011年冬の日本。風邪のような症状で病院を訪れた男性が、3日後に急変。口と目から血を流して、苦しみのうちに死亡した。当初、近くの養鶏場で出た鳥インフルエンザが変異し、それにかかってしまったのではと見られたが、結局、違った。


正体不明の未知のウイルスが、日本中を席巻し、国民が次々に罹患。100万人以上の死者を出し、東京はパニック状態どころか、都市機能を失って壊滅してしまうのだ。

 

何が怖いって、血よ、血。患者の口からも目からも、大量の血が出る。血を流す人の映像って、人の心にダメージを与えるんだなってあらためて思った。


それと、急激に容体が悪くなり、死に至ってしまうところ。え、この人、さっきまで話ができてたのに、もう死んじゃうの?っていう。コロナでも、そういうことがあるらしいから、こんな感じなのかな…と恐くなった。

 

このウイルスは、致死率およそ5割で、コロナよりももっと強力でやばいものなんだけど、コロナに共通するところもたくさんあって。

 

<飛沫感染する>
感染者がゲホゲホしながら電車から降りて、ホームに血を吐いてしまう。それを、何も知らずに駅員さんが掃除をする。すると、ブラシでこすった血が目に入ってしまい、罹患し、THE END…。
そのシーンがすごくリアルで、コロナもこうやって、知らないうちにかかってしまうんだろうな…と震えてしまった。

 

<発生源がコウモリ>
結局、感染源は東南アジアのとある小さな島であるということが判明。その島の、森の奥深くでコウモリと接触した島人が最初の感染者で、そこから島中に広がった。


そして、行商などで島外に出た人がさらに感染を広めてしまったのだ。たまたま、その国で医師をしていた日本人が帰省してウイルスを日本に持ってきたというわけ。

 

コロナも、中国の山奥の小さな村で村人がコウモリを食べたことから感染したと聞いている(武漢の研究所から広まったという説もあるが、いずれも中国が認めていない)。


この映画は感染症に詳しい医師や専門機関が監修しているみたいなのだけれど、コウモリが発生源である感染症はこれまでも知られているのだろうか…。

 

<医療崩壊が起こる>
本当にものすごい勢いで感染が拡大し、致死率も異常に高く、早々に医療が崩壊してしまう。ベッドに収容できずに廊下などに患者があふれるのはまだかわいい方で、外にテントを張って対応。


診療を受けたい人たちがゴホゴホ咳をしながら行列をなし、その場でバタバタと倒れる人もいる。「どうして入院できないんだ!」と怒鳴る患者に、「重症の方が優先です。歩ける方は自宅待機をお願いしています」と答える看護師。「見殺しにするのか!」と怒鳴り返す患者。カオスである。

 

人工呼吸器の数が足りなくなり、元から疾患があって助かる見込みのない人から人工呼吸器を外し、別の患者に付け替える。命の選別を行わなくてはならない状況。


また、医師や看護師の間も感染し、亡くなる人が出てくる。そして、「もう嫌だ!」と泣き出したり、仕事を放棄する医師・看護師が続出する。

 

今、ニューヨークなどで医療崩壊が叫ばれているし、日本もそろそろ限界だと聞く。メディアでは感染者側の声は度々扱われるけれど、病院内の状況、医療従事者の切実な声はなかなか届かない。


ワイドショーで大した知識のない芸能人が政府批判や、自粛しない人たちへの苦言を繰り返しているが、そういうのはいいから、もっとリアルを見せるべきだ。政府や自粛しないバカには、リアルを突き付けるのが一番だと思うのだ。


<買い占めやロックダウンが行われる>
映画の中では、何の予告もなく唐突に道路が封鎖され、「家に帰ってください。食料は各家庭に配布いたしますのでご安心ください」とアナウンスが繰り返されるという、かなり強引で非現実的なロックダウンが行われる。


その以前には、スーパーに人々が殺到。我先にと食料を手に取り、「並んでください!」という店員の注意も聞かず、押し合いへし合い状態。演出が過剰ではあるが、今この状況だからこそ、この買い占めという行動が理解できる。


また、CGだと思うのだけれど、主人公の妻夫木聡が荒廃した東京のど真ん中で立ち尽くすシーンがあって。メトロの入口がある、銀座の一等地。そこらじゅうから煙が上がり、ゴミやがれきが街中に散乱し、人っ子ひとりいない。大げさに描かれてはいるものの、完全に終わってしまった東京の姿が、やばいのだ。

 

このように、「はぁ…」とため息をつくようなシーンが満載のなか、いくつか「おいおい!」と突っ込みたくなる部分もあって、それが心を和ませてくれた。

 

例えば、主人公の妻夫木聡とヒロインの檀れいのいい感じのシーンでは、必ず雨が降るとか。おいおい!びしょ濡れになるから続きは建物の中でやってくれよ!と言いたくなる。

 

例えば、医師のくせに、妻夫木聡がものすごい無防備であるとか。おいおい!ここではマスクしないとやばいぞ!もう遅いぞ!とハラハラするのだが、妻夫木聡の免疫力の高さが半端なくて、彼は全然感染しない。

 

例えば、感染源の島で、島民がゾンビのごとく襲ってくるとか。おいおい!死にかけている人間が急に立ち上がって、集団で追いかけてくるってどういうこと?。いきなりゾンビ映画になっちゃったよ!申し訳ないけど、ちょっと笑ってしまった。

 

ほかにも、家族などとの仲睦まじいシーンがある人はたいてい死んでしまうので、そういうシーンが出てくると「あぁ、この人に死亡フラグが立った…」とわかりやすく展開が読める。


いろいろあるけど、それが逆に良かった。そういうのがなかったら、リアル過ぎてしんどくて、途中で見るのやめてたもん。

 

この映画、空港とか、沖縄行きの飛行機とか、高速バスの中とか、パチンコ屋とか、ゴルフ場とかでエンドレスで流しておけばいいのに。特に人が死ぬシーン。アホたちを黙らせるには、そのくらいの荒治療が必要だと思うのだ。

 

あ、付け加えておくと、コロナ鬱になりかけている人は、見ない方がいい。鬱が進行しちゃうから。