娼年
(監督:三浦大輔/主演:松坂桃李/2018年)

 

「松坂桃李が出てるAVだよ」

ひと足先に見ていた、友人のIちゃんがそう言ってたっけ。

 

何それ?松坂桃李、そんな体当たりな役をやっちゃてるの?でも、それって、彼の裸体を合法的に拝めるってことよね。…ええやん。
そんな軽い気持ちで見てみた。

 

松坂桃李演じるリョウは、Barでアルバイトをする大学生。頭が良くていい大学に入ったのに、「大学なんて行っても意味ない」と、授業をサボる毎日。適当な女を見つけてはセックスを繰り返すが、「女なんてつまらない」と冷めている。

 

そんな彼が、偶然、ボーイズクラブのオーナーである静香に誘われ、娼夫として働き始める。年上の女性に金で買われるのである。


リョウはさまざまな女性と身体を重ねるうちに、女性たちが抱える心の闇、弱さ、彼女たちのこれまでの人生の機微などを感じ取っていく。さんざん「つまらない」と言い切ってきた女性に対して、真逆の感情を抱き、娼夫という仕事に喜びを見出していくのだ。

 

娼夫という題材柄、R18で8割が性描写。Iちゃんが「AVだ」というのもよくわかる。松坂桃李の美しいお尻や官能的な喘ぎ声を堪能できた点は、ありがたき幸せと思おう。

 

でも、これ、松坂桃李じゃなきゃダメだったの?ねぇ、監督も、事務所も、本人も、これで良かったの?と問いたくなる。これ、確実にイメージダウンなのでは…。

 

その理由は、Amazonに寄せられた口コミを見ればわかる。

 

「性描写に関してはすべてが男性目線。あんなのされたら普通に痛いし…。と言うのが、男性の間では「良い技」だと未だに信じられているのが不思議です。男性が作ったAVの手腕そのままが発揮された作品。

 

光と影の使い方など、非常にきれいに撮れているなとは思いましたが、セックスの描写に関しては完全に駄作としか言いようがありません。いい加減、女性目線にたった性描写を勉強しろよ!と思います」


「実際問題あんなにガサツに抱かれたら普通に痛いし、意思の疎通がある素敵なセックスには見えませんでした 」

 

「娼夫を呼んであんなお粗末レベルの愛撫されるならお金をドブに捨てたと思うはず。痛いだけじゃん、あんなの。監督、よくこんな下手な性技での映画化を許しましたね」

 

「性描写については、松坂桃李さんのあえての演技と思いたいです。本気であんなに下手くそだったらショックだわ。全身あざだらけになりそう。とんだ勘違い野郎というかお子ちゃまなテクニックというか、とにかく酷い」

 

いやいや、酷評のオンパレード。うん、うん。そうだよね、あれはひどいよねと、私も完全に同意する。

 

松坂桃李がプライベートであんなセックスをしているのだとしたら、完全に引くけど、どうやらかなり細かいところまで演出がなされているらしい。


A-Studioに出演した際、鶴瓶に質問されて、「リハーサルできちんと動きを決めている」と答えたのだとか。

こちらの記事に書いてあった)

 

良かった、良かった。でも、だとしたら、演出をした監督の問題か。監督が、ああいうセックスで女性が喜ぶのだと思い込んでいる、勘違い野郎だということなのか。

 

物語の後半で、最初のセックスを「全然ダメ」とけなした静香に、「成長した自分を見てほしい」と言って、その娘と行為に及ぶシーンがあるんだけど、びっくりするほど、何も成長していない。


ただ、相手の足と手の指をベロベロ舐める小ワザが加わっただけじゃん!っていう。なんかちょっと悲しくなっちゃったよ。

 

とは言え、松坂桃李自身は、この作品への出演を「後悔していない。30代に向けての挑戦だ」と語っている。マジか…。

こちらの記事に書いてあった)

 

調べてみたら、この作品は2016年に松坂桃李主演で舞台化もされているらしい。映画化にあたって続投という流れだったから、抵抗感もなかったのかな。ってか、これを舞台でどうやって上演したのか、謎すぎるけどさ…。

 

舞台なら限られた人しか見ないけど、映画となったら、不特定多数の人が見るわけで。安易に続投しない方が良かったんじゃないかなぁ。当時20代後半という年齢で結構落ち着いて見えたし、20歳の大学生の雰囲気を出すのにも無理があるように思えた。

 

この映画は、これから売っていきたい若手俳優を「大抜擢!」的な感じで使った方が良かったのではないだろうか。

 

とにもかくにも、松坂桃李と絡んだ女優陣の皆さんには、ほんとにお疲れ様!と労いの言葉を贈りたい。彼女たちこそ、体当たりの演技だったと思う。あと、同じく娼夫役を演じて、男性同士の濡れ場にトライした、猪塚健太にも、大きな拍手を。

 

あれだな、若い男性諸君には、勉強のために、これを悪い例として見ることをオススメしよう。違った意味でのレコメンドムービー。