大好きだったテレビ番組「クレイジージャーニー」に「危険地帯ジャーナリスト」として出演していた、丸山ゴンザレスさんの本。
(私がこのレビューで、クレイジージャーニー出演者の本を紹介するのは、3回目!)
ここで文字を打っていてあらためて、「ゴンザレス」って何?と思ったのは置いておいて、彼が宮城県出身だということを本書のプロフィール欄を見て初めて知り、「同郷じゃん!」と親近感が沸いている。
ゴンザレスさんは、スラム街や売春街、ギャングやマフィア、殺し屋など、「そこ、近づいたらヤバイでしょ」という世界各国の危険地帯に足を運び、取材を重ねているジャーナリストだ。
この本は、その取材を通して出会ったさまざまな「悪いやつら」の価値観や生き方に焦点を当て、ゴンザレスさんならではの視点で、彼らの思想についての見解が綴られている。
殺人、スラム、裏社会、売春、麻薬、非合法ビジネス…。今私がいる環境下では知る由もない、映画の世界のような出来事が、誰かの「日常」として起きている現実。ページをめくりながら、「はぁ…」とため息が出た。驚き、憐れみ、興奮…。なんとも言葉にしづらい感情の塊としての、ため息である。
世界には、「仕事だから」と割り切って、金のために淡々と人を殺す人間がいる。取り調べの手間を省きたいからという理由で、追いかけたギャングの大半を射殺する警察官がいる。
車の修理費を取られるのが嫌だから、交通事故で瀕死の相手にとどめをさして命を奪う人間がいる。子どもを食わせるために、妻に売春をさせる夫がいる。
カースト上、生まれたときから町の男たちの性処理をする人生が決められた女性がいる。ただ「これまでの人たちが争ってきたから」と、抗争を続けるギャングたちがいる。
良心とか、倫理とか、もはやそういう話ではない。彼らにとってそれは、歴史であり、文化であり、生活であり、己の存在そのものなのだ。善悪の分別を持って生きている自分の方がマイノリティなのではないかと錯覚するような感覚さえおぼえてしまう。
全く異なる価値観に触れられることがおもしろくて、とても興味深く、気付けば一気に読み終えてしまっていた。
あとがきには、こんなハッとするような言葉があった。
「今の世界に不満がある人や、恐れを抱いている人もいるだろう。そんな時に『世界よ、平和になれ!』と祈るよりも、そんな世界に対応できる自分に生まれ変わる方がいいのだ。」
「自分がどん底にあって、不幸を嘆いていても、世界はあなたを救わないし、時間は流れていくだけだ。いじけたってなんの意味もない。自分勝手と言われても、自分を優先して変化を求める。徹底して自分が軸であるべきなのだ。」
なるほど…。「生きること(=お金)」にしか執着しない、多くの悪いやつらを見続けてきたからこその言葉。彼らの生き方は、ある意味、潔くて、たくましくて、迷いがない。
世界は、広い。
私は、生まれ変わったら、FBIとか、忍者とか、探偵とか、表立って活動しないような業種に就きたいと思っているんだけど、ゴンザレスさんのような裏社会を追うジャーナリストにも憧れる。
ちょっとやそっとのことじゃ死なないような、屈強な男に生まれて、危険地帯をこの目で見て回りたい。