タイトルは、おじいさんと猫との慎ましい生活を描いたものを想像させるし、肩に乗る猫のイラストは、猫好きの心をくすぐるのに十分すぎる。
完全にジャケ(本だから、装丁かな?)買いしてしまった。
さらに、帯には「心理学の教授が読みとく猫の世界」とある。きっとこれまで知らなかった猫のことがわかるかもしれない!と、意気揚々と読み始めた。
しかし、結局、この本のなかで猫の不思議は、まったく解明されていない。
猫は大いなる謎に満ち溢れた魅力的な生き物で、しかし、いや、だからこそ、ただただ愛らしい。心理学の教授をもってしても、そんな結論しか出なかったよ。猫かわいいね。ざっくり言うとそういう本なのだ。ウケる。
医師免許を持ち、大学教授として教鞭をとり、何冊も専門書を出している60歳を過ぎた男性とその妻が暮らす家に、小さな猫が迷い込む。
スウェーデンの冬の寒さは厳しく、猫は夫婦の家の物置小屋に避難しては夜を過ごす。夫婦は猫に同情し、たまに餌を与えるなどしていたが、ある日、入れてほしそうにしている様子を見かねて家の中に招き入れてしまう。
するとたちまち、その愛らしさの虜になってしまう。そして「キティ」という名を与え、我が家の猫として飼い始めるのだ。
地位も名声もあるひとりの男性が、どれだけ我が愛猫がかわいらしく、魅力的な存在なのかを、己の持つあらゆる知識を分析力を総動員して、さまざまな角度から語り尽くす。
読めども、読めども、愛猫自慢。その毛並みや体型、しぐさなど、キティの一挙手一投足をつぶさに観察し、丁寧に書き連ねる。
どんなふうにネズミを追いかけるのか、どんな食べ物が好きなのか、もし他に名前をつけるとしたらどんな名前が似合うだろうか…。
3日ほどキティが帰らなかった期間はどれだけ不安だったのか、猫は人間に特定の愛情を持つことがあるのだろうか、なぜキティはうちの猫になってくれたのか…。
さすが学者だけあって、時には世界で最初に猫を家畜化した古代エジプトの話、ノーベル文学賞を受賞した詩人が書いた猫にまつわる記述、チンパンジーに関する研究など、学問的な事例を出しては、猫について深く考察する。
よくもまぁ、1匹の猫のことで、こんなにも話を広げて、長々と文章を書けますよねっていう。でも、結局、いろいろ難しいこと書いてるけど、「猫かわいい」ってところに落ち着くのである。
こんなにもわかりやすく、猫にメロメロになっているおじいちゃん。無類の猫好きとしては共感できる部分がものすごくあって、終始、ニヤニヤしながら読んでしまった。
興味深いのは、この「猫が好きです!猫かわいいです!」ということをツラツラと書いたこの本が、スウェーデンでベストセラーになっているということ。
そうそう、猫といるとこんなにも幸せで、こんなにも心配で、こんなにも豊かなのだということを、この本を読んで再確認するという感じなのかな。いやいや、みんな、猫との暮らしにぞっこんなんだね。わかるよ、すごくわかる。
私は将来的に、猫を2匹以上飼うのを人生のマストプランにしているから、その日が来たら、猫たちとの暮らしをつぶさに記録して、本にしようかな。狙え、ベストセラー!